車の紋様としては平安王朝の代表的、象徴的なものに御所車、源氏車、片輪車など数々あり、その多くは花や流水などと共に表わされている。
車は文明の発達と共に馬車、牛車、風車、水車などに変化を遂げ、今に至る。
ふと車を織物に見ると、製糸や糸繰りに使用する五更や糸繰り機、経糸を巻く千切、紋紙を送るジャガタラと呼ばれるシリンダーなど多くの織物道具に車の技術が使われていることに気づく。
現代の自動車、自転車、電車など回転するものに通じる先人たちの智恵と工夫が成された技であるといえる。
本裂は、古代から続く文明の叡智の一つである車を、流麗な綾線の流れに配し、雅に、有職風に新しく錦に表現しようと試みた紋様である。