錦の伝統織物の技術の一つに箔がある。専門の職人により作られる箔は金箔、銀箔、柄箔など表現の仕方や素材など無限に存在するが、その中にホログラムを用いた箔がある。
ホログラムは光を利用した3次元像の世界であるが、錦も経糸と緯糸が重なり合い、立体構造をし、光が放射する絹糸の特性から視覚的に色彩が千変万化する3次元の世界である。
この伝統と現代の技術による2つの3次元の世界を重ね合わせ、伝統的な箔の技を融合し、光を表現した。
現在、伝統織物の技術の衰退、後継者不足が危ぶまれていますが、その中の一つに金銀箔、模様箔を織物に織り込むという技術があります。これらの箔は織物業界でいう「箔屋さん」が箔を制作し、「切り屋さん」が織物の設計に合せて箔を糸状に細かく裁断します。箔を織物に織り込むという技術は世界でも稀有な伝統技術であり、紋様を彩るに必要不可欠なものなのです。
しかし、経済不況などにより箔自体を制作することが少なくなり、またそれによって「切り屋さん」も仕事が減ってきている現状にあります。
このシリーズでは織物の技術に焦点をあて、それを最大限に生かし、尚且つ現代の生活や様式に添った織物を制作し、現在危機的状況にある技術の保存と職人の後継者問題の解決の糸口となるような作品を創作することが目的です。
本作品はホログラム箔を制作し、織物として商品化することによって、箔制作の技術の向上と「切り屋さん」に仕事を継続的に創出することを目的に織物を制作いたしました。